RIE MIYATA
街全体がランウェイショー!2012年春夏NYコレクション
こんにちは。ファッションジャーナリストの宮田理江です。
先日、ニューヨーク・コレクションの取材に行ってきましたので、
その模様をお届けしたいと思います。
世界4大コレクションの先陣を切って開幕した
2012年春夏NYコレクションは9月8~15日に開催されました。
一般に「ニューヨーク・コレクション」と呼ばれるイベントは
正式には「Mercedes-Benz Fashion Week」という名前のとおり、
ドイツの高級自動車ブランド「メルセデス・ベンツ」が
冠スポンサーになっています。
実は、10月に開催される東京コレクションも今回から
「Mercedes-Benz Fashion Week TOKYO」に名前が変わります。
長年、ミッドタウンの公園「ブライアントパーク」で開催されていた
NYコレクションですが、2010年からはアップタウンにある、
劇場やコンサートホール、芸術学校、図書館などが集まる
総合芸術施設のリンカーン・センターに移動しました。
Mercedes-Benz Fashion Weekでは正式なスケジュール以外にも
マンハッタンのあちこちでショーや展示会が開催されています。
深夜まで続くショッピングイベント「ファッションズ・ナイト・アウト(FNO)」も
期間中に開催されるのが恒例になっています。
一番の華は有力ブランドが新作を披露するランウェイショー。
世界中からショーを観に、ジャーナリスト、バイヤー、セレブなどが
大勢集まって、会場内には熱気が立ちこめます。
カメラブースにも世界中の国からメディアが集まり、
クロスオーバーな土地柄のNYそのもの。
様々な国・地域の言葉が飛び交う、
エキサイティングでグローバルな空間で
各ブランドの新作がお披露目されました。
WHAT GOES AROUND COMES AROUND 2012年春夏NYコレクション
Richard Chai Love 2012年春夏NYコレクション
Suno 2012年春夏NYコレクション
Narciso Rodriguez 2012年春夏NYコレクション
クラシカルで上品なムードが主旋律となった
2011-2012年秋冬ファッションとはうって変わって、
今度の2012年春夏ファッションは、ぐんとカラフルな世界へ導いてくれます。
色や柄が躍り、目の覚めるような明るさがおしゃれを華やがせそうです。
イエロー、オレンジ、レッドなどの鮮やかな色同士を組み合わせたり、
異なる柄を重ね合わせるような、自由で楽しいファッションが目を惹きました。
強い色同士のカラーブロックも相次いで提案されています。
柄の種類も豊富で、大花、ドット、ボーダー、ウエーブなどに加え、
アメリカンネイティブ、イカット、アフリカンなどのエスニック柄もお目見え。
まるで柄見本集のように柄がたくさん登場するから、
今からシーズン到来が待ち遠しくなるほどです。
そのほか、スポーティーをフェミニンに落とし込んだルックのような、
NYらしい軽快なコレクションも注目を集めそうです。
L.A.M.B 2012年春夏NYコレクション
Porter Grey 2012年春夏NYコレクション
Rachel Antonoff 2012年春夏NYコレクション
ここ数年の流れとして、ランウェイショーでなく、
プレゼンテーション(展示会)形式で作品をお披露目するという
ブランドがどんどん増えてきているのを実感します。
モデルが颯爽と歩くランウェイショーは迫力と興奮
という点ではとても申し分ないのですが、
ランウェイをサッと行って戻るだけのシンプルな動きが基本であり、
作品の魅力をじっくり確かめるというわけにはいきません。
一瞬で通り過ぎてしまうので、細部を見逃してしまうことがあります。
後方のシートだと、足元までちゃんと見えないというデメリットも。
しかし、プレゼンテーションの場合は、様々な角度から眺め回せるので、
服が各アングルからどう見えるかという事まで分かります。
シートがない分、近くで観ることができるので、素材感も感じることができます。
もちろん、実際にモデルが着て歩くランウェイの魅力は計り知れないので、
まだまだ発表形式の主役ではあっり続ける見通しです。
最近はショーの映像をネットで配信するブランドもどんどん増えていて、
ショーをより身近に感じ取りやすくなっています。
今後は表現の選択肢がさらに増えて、ブランド、デザイナーごとに
新たな見せ方を考えることになっていきそうです。
スピード感あふれるNYコレクションは、今や世界的に認知された
ファッションブロガーが多く集まることでも知られています。
世界中からファッションブロガーが集まり、ランウェイショーでは
シートから写真を撮り、ブログやSNSにアップしていきます。
その書き込み、リポートが大勢のファッション好きに読まれて、
大きな宣伝効果も生まれているようです。
ファッションの「見せ場」となっているのは、ランウェイ上ばかりではありません。
会場内のゲートウェイ周りや客席までもがショー化して盛り上がっています。
セレブやモデル、ファッショニスタなど多くの来場者が
最先端のファッションを身にまとって会場に姿を現すので、
大勢のメディア関係者やブロガーがおしゃれスナップを撮影します。
写真は、ノルウェー出身のファッションブロガー兼フォトグラファーの
ハネリ・ムスタパルタさん。彼女は元モデルだけに、
抜群のスタイルとファッションセンスを持っていて、会場でも
頻繁にスナップ写真を撮られる側でもありますが、このように
自らファッショニスタを撮影する立場でもあります。
被写体と撮影者が入れ替わるような、こんな風景も
彼女をはじめ、多くのブロガーによく見受けられます。
ハネリさん(左)は早速、この秋冬トレンドで
大注目のマニッシュなツイードパンツスーツでまとめ、
先の尖ったポインティッドトゥー靴で合わせています。
クラシカルムードのバッグは、鮮やかなグリーンをチョイスして
着こなしのアクセントにしています。
ロンドン在住のスージー・バブルさん(右)も、毎回、
人気ファッションブロガーとして有名で、おしゃれスナップの常連です。
彼女の着こなしは毎回、スーパーミックスでオリジナリティーに富んでいます。
新進クリエーターの作品を多く採り入れていることで
知られていて、日本ブランドもよく愛用しています。
2012春夏コレクションでも脚光を浴びた艶やかブルーをフィーチャー。
透けるチュール素材をベースに、ブルー×ピンクのカラーブロックでまとめています。サンバイザーやマニッシュ靴などの小物使いにまで目配りの行き届いた、
細やかな着こなしは東京ストリートをも思わせる雰囲気です。
フィリピン出身の男性ブロガー、ブライアン・ボーイさん(左)は、
トップデザイナーのマーク・ジェイコブスが評価するほどの
カリスマブロガーで、NYコレクション会場にも毎回、足を運んでいます。
アメリカ・サンディエゴ在住のファッション・ブロガーとして
日本でも多くのファッション誌に登場しているのが、
写真のルミ・ニーリーさん(中央)。この秋冬トレンドをとらえて、
マニッシュなパンツに、落ち感のあるシャツで合わせ、
マスキュリン感を強調したスタイルで
いつもと違ったムードを演出していました。
レディースファッションにメンズテイストを差し込む着こなしが定着する一方、
メンズの世界でもジェンダーレスは加速しています。
アンドロジナスの魅力を発しているオーストラリア出身の
男性モデル、アンドレイ・ペジックさん(右)は、
トップブランドのウィメンズコレクションのモデルとしても
登場するほど、見事にレディース物を着こなします。
NYコレクション会場でキャッチした際は、「女性よりも美しい」という
評判通り、息を呑むような妖艶さを漂わせていました。
今シーズン、自らの名を冠したブランド「The Rachel Zoe Collection」を
発表し話題をさらったカリスマスタイリストの
レイチェル・ゾーイさん(左)のファッションはいつ見てもパーフェクト。
この日キャッチした際も、首元が詰まった
クラシカルなフォルムの膝下ワンピに、帽子&バッグもコーデした、
モダンレトロなスタイリングを披露してくれました。
テレビドラマ『セックス・アンド・ザ・シティ(SATC)』でもおなじみの、
こちらもカリスマスタイリストで、日本びいきとしても
有名なパトリシア・フィールドさん(右)は、ロック&パンチの効いた、
いつkもながらのチャレンジングな装い。ストライプパンツを軸にして、
マスキュリン帽&ブーツをアクセントにした着こなしでご登場です。
米国版「ヴォーグ」誌編集長の、ご存知、アナ・ウィンターさん(左)。
ファッションズ・ナイト・アウト(FNO)を発案したことでも有名です。
ウィンターさんの着こなしはエレガントなものが多いのですが、
きちんと最新トレンドが盛り込まれているところが、さすがの
センスを感じさせます。クルーネックのヌーディー色の
ニットの上から、ネックレスをオンして、膝下のフレアースカートで
レディーライクな着こなしが魅力を放っていました
(隣は、大御所ファッションジャーナリストのスージー・メンケスさん)。
前任者のカリーヌ・ロワトフェルドさんに代わり、フランス版「ヴォーグ」編集長
新編集長に就任したエマニュエル・アルトさん(右)は、
抜群のスタイルを生かした、メンズライクなアイテムを採り入れた、
クールシックなパリ流スタイルがお得意です。
ハリウッドスターもコレクション会場に当たり前のごとく現れるのが
NYファッションウイークの醍醐味でもあります。
「カルバン クライン」のショー会場に訪れたスターは
ユマ・サーマン(左)とナオミ・ワッツ(右)。
どちらもミニマルを基調とするNYシックの代名詞的存在の
「カルバン クライン」コレクションに身を包んでのご降臨。
会場内だけでなく、NYのストリートをも盛り上げました。
NYファッションウイークは、一部の限られた業界人だけでなく、
NY全体で盛り上げているファッションイベントです。
日々のテレビニュースにも取り上げられ、この時期はNYの街が
ファッションの熱気に包まれます。
移動に欠かせないタクシーの運転手さんも知っていて、
市民がこぞって応援しているところに魅力を感じます。
ランウエイ、プレゼンテーションに登場するモデル達や、
会場を訪れるセレブやファッショニスタ、ブロガー、
そして、もちろん自慢の最新作を発表するデザイナー、
そんなたくさんの人たちのパッションがNYを熱くする約1週間。
NYコレクションは単なる「お披露目」の場ではなく、
ファッションの「チカラ」をみんなで共有する時間と言えるでしょう。
ファッションの楽しさを皮膚で感じ取れるNYの街を
この時期に訪れて、その熱気に触れれば、
おしゃれとの向き合い方も変わってくるに違いありません。
2012年春夏のファッショントレンドは、また改めてお伝えしますので
楽しみにしてお待ちください!