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「M. MARTIN(エムマーティン)」と「ERIKA CAVALLINI SEMICOUTURE(エリカ・カヴァリーニ・セミクチュール)」 国もテイストも異なる両ブランドの魅力
こんにちは。ファッションジャーナリストの宮田理江です。
M. MARTIN
「ガリャルダガランテ」では個別のブランドにフォーカスを当てたポップアップイベントをしばしば催しています。気鋭のクリエイターや光るブランドを、「ガリャルダガランテ」のバイヤーが見つけておすすめする企画だけに、毎回、見所の多いイベントとなっています。この10月に開催するポップアップで取り上げるのは、ニューヨークブランドの「M. MARTIN(エムマーティン)」と、イタリア発の「ERIKA CAVALLINI SEMICOUTURE(エリカ・カヴァリーニ・セミクチュール)」。この機会に両ブランドの魅力をご案内していきたいと思います。
◆M. MARTIN(エムマーティン)
「M. MARTIN」は9月にNYコレクションでのデビューを飾った、まだ比較的若いブランドです。でも、その実力と注目度は新鋭の枠を超えていて、ファッション誌『ELLE』は米国版サイトに掲載した「ニューヨーク・ファッションウイークで知っておくべき10の新レーベル」と題した特集で「M. MARTIN」を選びました。紹介文では「スーパーイージーでウルトラクールなスポーツウエア」という表現で、そのみずみずしいテイストを高く評価しています。
「M. MARTIN」を紹介する際、多くの米国メディアが「アメリカンスポーツウエア」という言葉を用いています。ブランド自身も自ら「アメリカンスポーツウエアがLegacy(受け継ぐべきもの、遺産)」と定義しています。この言葉は今のファッションシーンで最重要キーワードの1つとなっているので、この機会に意味をつかんでおきましょう。
誤解されやすいのですが、「アメリカンスポーツウエア」とは、別に「運動」という意味での「スポーツ」を指しません。ファッション用語としての「アメリカンスポーツウエア」は動きやすさや着心地に優れた服を主に意味しています。実用性を重んじるアメリカらしい、無駄な飾り気の薄い、でも退屈ではない風情を備えているのが一般的なテイスト。NYモードを代表するマイケル・コース氏をはじめ、アメリカンスポーツウエアをコンセプトに掲げる米国ブランドは少なくありません。
130,000円(+TAX) M. MARTIN
190,000円(+TAX) M. MARTIN
62,000円(+TAX) M. MARTIN
70,000円(+TAX) M. MARTIN
62,000円(+TAX) M. MARTIN
創業デザイナーの女性、Alex Gilbert(アレックス・ギルバート)氏も新しいスポーツウエアを意識して新ブランドを立ち上げました。祖父Martinと祖母Minnaの名前にブランド名が由来しているのは、第2次世界大戦の真っ只中にファッションビジネスを始めた祖父母への思いからです。
ゆったり感を保ちながらも上品さを漂わせるような、自信を持った大人女性に向けた服づくりを目指しています。「ミッドセンチュリー」と呼ばれる、1950年前後のモダンなデザインを現代的にアップデート。アメリカンスポーツウエアらしい美的感覚をリファインしながら受け継いでいます。
実はアレックスがブランドを興すのは、これが最初ではありません。「Paper Denim& Cloth(ペーパーデニム アンド クローズ)」も彼女がかかわったブランドです。幼い頃から実家でファッションビジネスに囲まれて育った彼女にとっては、自分でブランドを持つことは、当たり前のように感じられるのかも知れません。
アレックスが「M. MARTIN」立ち上げに当たってパートナーに迎えたのは、友人であるJennifer Noyes(ジェニファー・ノイエス)氏。「Prada(プラダ)」でウィメンズウエアを任されていた実力者です。異なるキャリアを持つ女性2人は互いに刺激し合って、気軽さとクラシック感、着心地よさとエレガンスを自然に同居させるテイストを成り立たせています。
素っ気なさすぎないシンプルさ、クリーンな輪郭、ラウンジウエアのような伸びやかさ。これらの持ち味が、オンとオフ、デイタイムとイブニングで着替える必要を感じさせない装いに導いています。
◆ERIKA CAVALLINI SEMICOUTURE(エリカ カヴァリーニ セミクチュール)
「ERIKA CAVALLINI SEMICOUTURE」は興味深いブランド名を掲げています。「セミクチュール」は創業デザイナーの造語。プレタポルテ(既製服)の上を行く「オートクチュール」はラグジュアリーの極みとされる「注文服」を指しますが、クチュールの手仕事感は備えながらも、「完成されていない」という、ちょっとひねったニュアンスを帯びています。
「セミクチュール」という言葉には、トルソー(立体裁断用のボディー)に着せた段階の半完成品の意味が込められています。注文通りに仕立てた「完成品」を提供するのがオートクチュールだとすれば、セミクチュールは着る人次第で変化する余地を残したウエア。あえて不完全なデザインにとどめるというコンセプトには、着る人の感覚を尊重する意識がうかがえます。
別の意味もセミクチュールにはあるそうです。オートクチュールと同じような技術やディテール表現を用いながら、スーパーリッチにしか手が出ないオートクチュールよりもずっとこなれたプライスを設定しているところも、「ERIKA CAVALLINI SEMICOUTURE」の持ち味。このクオリティー感と価格帯のうれしい「アンバランス」を示す意味もブランド名にはあるようです。
「メイド・イン・イタリー」をブランド立ち上げ当初から貫いてきました。イタリアの熟練した職人が誇るクラフトマンシップがクリエーションの背骨になっています。ボローニャとモデナの間にある、小さな街の職人たちが手がけています。2009年春夏コレクションからスタートしたという、創業5年余りの若いブランドですが、確かな仕事ぶりは早くから高い評価を集め、14年9月には世界初のフラッグシップショップがミラノにオープン。ミラノコレクションで初のショーも15年3月に実現しています。
クリエーションの特質としてあげたいのが、全体に漂うヴィンテージ感です。質感や風合いにヴィンテージの風情が忍び込ませてあり、それがロマンティックなシルエット、凝ったディテールとの相乗効果を生んで、自然なタイムレス感をもたらしています。すべてイタリアで作られているというプロセスも装いにヨーロッパの詩情や歴史性を添えているようです。
64,000円(+TAX) ERIKA CAVALLINI SEMICOUTURE
46,000円(+TAX) ERIKA CAVALLINI SEMICOUTURE
87,000円(+TAX) ERIKA CAVALLINI SEMICOUTURE
70,000円(+TAX) ERIKA CAVALLINI SEMICOUTURE
60,000円(+TAX) ERIKA CAVALLINI SEMICOUTURE
38,000円(+TAX) ERIKA CAVALLINI SEMICOUTURE
45,000円(+TAX) ERIKA CAVALLINI SEMICOUTURE
自分のスタイルをしっかりと持つ現代女性をイメージしているという「ERIKA CAVALLINI SEMICOUTURE」は2015-16年秋冬シーズンのコレクションで、「パーティーの翌日」+「厳格で自由なワイルドスピリット」というコンセプトを掲げました。けだるさと厳格さ、フェミニンとマスキュリン、気品と激しさ、軽やかさと重厚さ。こういった相反するムードや感覚がお互いに作用し合って、奥深いコントラストを生むという趣向です。
「強さ」を主張したのは、テーラードカットやミリタリーテイスト、アニマルプリントなど。一方、「やわらかさ」はやさしいフラワープリントや揺れるレイヤードなどがささやきかけました。気取らない足元を印象づけるプラットフォームシューズ、着物の帯を思わせるベルトなども存在感を発揮しました。
素材の面では、軽やかな風合いを持つモスリンやクレープデシンオーガンザ、サテンなどと、秋冬らしい量感を出せるトリプルジャカードや圧縮ウール、モヘアなどをミックス。強弱のリズムを生みました。幅広いカラーパレットも表情に奥行きをもたらしています。ネイビーやブラック、ミリタリーグリーンといったダークカラーに、ぬくもり感を添えたのは、イエローやパンプキンオレンジ。さらに、まばゆくつやめくメタリックゴールドとシルバーが装いに勢いを加えてくれます。
国もテイストも異なる両ブランドにフォーカスしたポップアップイベントはどちらも10月13日(火)から、表参道店と京都店で開催されます。冬を前にした絶好のタイミングで開催されるイベントに足を運べば、秋冬ルックのヒントもつかめるはずです。
■M. MARTIN POP UPイベント 10月23日(金)より開催。 展開店舗:表参道店・京都店
■ERIKA CAVALLINI POP UPイベント 10月13日(火)より開催。 展開店舗:表参道店・京都店
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