RIE MIYATA
「My story, My fashion」・・・ノスタルジックな70sミックスに魅せられて
こんにちは。ファッションジャーナリストの宮田理江です。
「ガリャルダガランテ」が提案する新しいスタイル「My story, My fashion」。フォトグラファー、イラストレーター、ブロガーとして多方面で活躍するGarance Dore(ギャランス・ドレ)さんの来日パーティーリポートでもお伝えした通り、その人の生き方やポリシーを映す、飾り立てない着こなしは、自然体の美しさを印象づけます。
http://www.gallardagalante.com/?p=3089
そして、先日、「ガリャルダガランテ」のプレスの方から、「宮田さんのMy story, My fashionを・・・」というお題を頂戴したことから、今回、こちらでご紹介させていただくことになりました。お付き合い願えましたら幸いです。
2015-16年秋冬シーズンの「ガリャルダガランテ」のコレクションテーマは「Nostalgic Simplicity ~ somewhere in the world」。どこか懐かしげでありながら、洗練されたシンプルが、「自分」をしっかり持つ都市女性の輪郭を際立たせます。グローバルトレンドの70年代テイストを取り入れつつ、ニューヨーカー流の自在なアレンジを利かせます。
2015-16秋冬NYコレクション(宮田理江インスタグラムより)
「70年代とニューヨーク」、実はこのテイストは私の一番好きな線でもあります。長年、NYコレクションを取材している私ですが、ここ数年は、そぎ落とした美という「ミニマリズム」のファッションが世界的にトレンドでした。ところが、少し前からミニマル傾向が弱まる変化が表れ、2014年9月のNYコレクションでは、きらびやかな70年代スタイルが復活。そして、15年2月のNYではさらに進化を遂げた70sフォークロア風が印象に残りました。本当に私好みのテイストで、コレクション会場で会った、日本の大御所ジャーナリストさんに「今季のトレンドは宮田さんっぽいね、好きでしょう?」と言われたほどです(笑)。
今回は、「ガリャルダガランテ」の15-16秋冬コレクションから、私の好きな70sスタイルやフォークロアムードを感じさせるアイテムをピックアップして、私流の「My story, My fashion」をお見せしたいと思います。
◆70sフェミニンスタイリング・初級編
まずは割とスタンダードな70年代風のコーディネートから始めましょう。選んだ主なアイテムはニットとファージレ、薄手のマキシ丈スカート、そしてお約束のフリンジ付きバッグです。70年代は「ヒッピーの時代」とも呼ばれ、ヒッピー気分ははずせません。
ただ、この秋冬はやたらとヒッピー感を濃くするのではなく、もう少し落ち着いたムードで、ノスタルジーを帯びたレトロっぽさを漂わせるのが、新しい操り方になってきます。大人っぽくフェミニンにアレンジするという点では取り入れやすくなります。秋冬らしいボリュームのあるニットやグラマラスなファーが着こなしを盛り上げてくれます。フリンジバッグは重たく見えがちな秋冬着こなしにリズムを与えてくれる点でもおすすめです。上半身にボリュームを持ってきた分、スカートは薄手の柔らかいもので合わせるのがコツです。ファージレは鮮度が高いレイヤードスタイルに仕上げられるという意味でも、この秋冬のコーデに迎え入れたくなります。
◆注目の「ロング&リーン」はこう着こなす
新シルエットとして注目を集めているのが、細く縦長の「ロング&リーン」。量感が出やすい秋冬にうれしい細感が出せます。キーアイテムはロングアウター。今シーズンは、思い切ってこれぐらい長いアウターに挑戦してみたくなります。コートより気軽に取り入れやすいのがこのようなニット素材のロングアウターです。こちらは、落ち感あるフォルムに、大胆なサイドスリットが入っているので、すっきり感がさらに強調されます。色味が異なるきれいめパンツで合わせると、コントラストがくっきり。大人スタイリッシュな着姿に仕上がります。アウターの前を開けて着ると、肩の力が抜けた「エフォートレス」の雰囲気に。バッグをたたんでクラッチ風に持つのも、無雑作感を出せる小技です。全体的にミニマルなコーデなのに、新鮮に見えるのは、やはりロングアウターのおかげ。細く長いシルエット=「ロング&リーン」コーデが決まるから、心強いアイテムになること請け合い。今回はパンツで合わせましたが、ミニスカートで合わせてロングアウターとの長短レイヤードで若々しく着こなすことでもできます。
◆70sノスタルジーをモダンに昇華・上級編
ポンチョ系のゆるい羽織り物はヒッピーに愛されました。ルールにしばられたくないという彼らの意識や、中南米カルチャーへの共感が背景にあったようです。ポンチョはフォークロア感が強めに出て、着るシーンを選ぶところがありますが、袖が通せるタイプのショールであれば、もっと自在に着こなせます。こちらも「ガリャルダガランテ」らしく何パターンも着こなしが楽しめるタイプです。端のフリンジも70s気分をプラス。そして、当時のアイコン的なボトムスは裾広がりのベルボトムジーンズでしたが、今のワイドパンツ人気を映したスーパーワイドのデニムパンツはさらにパンチが利いていて、私的に一目惚れ。袴のようなワイド感がボディーラインを逆に華奢に見せてくれます。ニットはマキシ丈スカートとのコーデと同じものです。最後に、ボヘミアン風味のハットをかぶせて、一段と私好みのスタイルにまとまりました。性別を越えたジェンダーレスの流れにもなじむコーデと自負しています。
◆タートルネック、グラフィックパターン
「ガリャルダガランテ」のショールームでは、他にも素敵なアイテムを見つけました。たとえば、この秋冬のマスト級重要アイテムと位置付けられているのが、首の詰まったタートルネックのニット物。ほっこりした風合いがやさしい着映えを生んでくれます。こちらのニットのミニワンピースは意外感の高いシルエットがキュート。身頃全体にグラフィカルな幾何学的モチーフを編み込んであるので、1枚で着ても単調に見えません。袖のないデザインは秋の入口から春まで長く楽しめそう。どことなくフォークロアな雰囲気のある編み柄が70年代感と懐かしさの両方を呼び込んでいます。
◆ラメ入りゆるニット
70年代はロックの時代でもありました。グラムロックが勢いづき、パンクロックが生まれた時期です。70年代風ルックにもロックテイストが色濃く写り込んでいます。ラメ入りのニットは当時の気分を感じさせます。モードの世界ではラメやスパンコールといったまばゆいきらめきを帯びる演出が見直されています。グランジ風のゆるっとしたシルエットもリラックスムードを添えてくれそうです。秋冬はダークカラーが多くなり、全体に沈んだ着映えになりがちなので、グリッターやシャイニーをまとうと、程よい華やぎを取り込めます。
◆チェック柄ストール
この秋冬に欠かせない柄はやはり「チェック柄」でしょう。チェック柄はロングトレンドになっていて、この秋冬もいろいろな表情でおしゃれのアクセントになってくれます。特に、格子サイズが大きめのタイプに注目が集まりそうです。着こなしにアクセントを添えてくれるのはもちろん、英国調のムードやシャープな印象も醸し出せます。つけはずしが自在なストールであれば、ワンポイントで差し込めます。無地系の装いにまとまった後からでも、チェック柄の大判ストールを加えれば、着姿が今年らしいブリティッシュ調に整います。あえてボヘミアン調のスタイルにミックスしても素敵です。
2015年3月パリ・クリニャンクール蚤の市にて(宮田理江インスタグラムより)
子どもの頃から親の転勤であちこちに移り住みました。少し住んで居た「香港」、そして、大人になって大好きになって通い詰め、働きながらも少し住んだ「NY」。それぞれの場所で感じたのは、世界中の様々な国・地域から集まった人たちが思い思いの好きなファッションを選び取っていたことでした。
自分の信条や美意識などに基づいて、他人の目をあまり意識しないで「My story, My fashion」を当たり前のようにまとっていた姿は、制服社会の日本で育った私の目にはうらやましくも心地よく映りました。ミックスコーディネートが好きになったのも、香港やNYの複雑なミックスカルチャーや自由な空気がルーツになっています。型にはまらない、ルールにしばられないファッションが私にとっては心地よいようです。
70年代のヒッピーカルチャーで主役になったフラワーチルドレンたちは、彼ら同様に体制の枠組みを嫌ったボヘミアンの装いを好みました。私自身は当時のファッションを経験していませんが、その頃の写真や映像を見るとすごいな~と思うのです。私がボーホーに憧れたのも、その奔放なスタイルが理由です。
古着やヴィンテージが好きなところも、私のスタイルの根っこになっています。時を経ても古びない品には、創り手の冒険心や職人気質、先見性などが宿っていて、現代のアイテムと交わらせることによって、さらに異彩を放って見えます。また、どこにもない1点物という点も、他の人とかぶらない点で気に入っています。自分らしいアレンジが組み立てやすいというところも、古着やヴィンテージに愛着を感じる理由です。パリやNYでは蚤の市での買い物やヴィンテージショップへの訪問を欠かしません。古着やヴィンテージを見ている時間は、宝探しをしているような気分になれるので、それ自体が私の趣味となっています。
こうやってマイストーリーをあらためて振り返って見ると、私のスタイルの奥底にあるのは、古いものと新しいもののミックスが好きなんだなと気づきます。最新のトレンドをウオッチしながら、新しいものも取り入れるけれど、自分の「軸」になっている好きなものが別にあって、それは長年、いろいろな服を着てきたから、自分の好みが確立してきたんだと思います。大人になるといいことがあります。若い頃より他人の目も気にならなくなりました。私もちょっとは成長できたのでしょうか。
自分にとって心地よいもの、好きなものがあったら、それがMy fashionにつながるので、ぜひ皆さんも好きなものがあったらそれを自分スタイルとして着こなしてほしいと思います。ちなみに、ミニマルが流行していたここ数シーズンも私はミニマルではなかったです(笑)。もちろん、トレンドのムードは好きなので、デコラティブな装いは極力控えましたが、ミニマルに乗っかるということはありませんでした。
皆さんにとって心地よいファッションとはどんなものですか? きっとそれぞれに異なっているはずですが、普段はなかなかはっきり意識していなかったりもするもの。「ガリャルダガランテ」のこの秋冬アイテムは、皆さんの内に秘めた「My story」や「My fashion」に気づくきっかけになるかも知れません。