RIE MIYATA
ギャランス・ドレさん来日リポート!おしゃれも生き方もヒントがいっぱい 成功するためには?心に残る言葉
今回はフォトグラファー、イラストレーター、ブロガーなどマルチな顔を持つ表現者のGarance Dore(ギャランス・ドレ)さんが参加した、一夜限りの来日パーティー「GALLARDAGALANTE meets Garance Dore」のリポートをお伝えします。このイベントは2015年7月17日(金)の夕方からGALLARDAGALANTE表参道店を会場に開催されました。
「GALLARDAGALANTE」が2015-16年秋冬シーズンのイメージアイコンに迎えたギャランスさんについては、この連載で先に詳しくご紹介したので、仕事ぶりやキャラクターはこちらをご覧ください(http://www.gallardagalante.com/?p=2922)。
リアル感の高い着こなしを得意とするファッショニスタである彼女だけに、この夜のイベントにはギャランスさんのトークショーをお目当てに大勢のファンやおしゃれ好きが詰めかけました。
会場となった表参道店に入ると、1階でオリジナルのドリンクが振る舞われ、早速、華やいだ気分に。イベント当日の買い物は1階の全商品が10%オフというサプライズもあって、ショッピングを楽しむ姿もあちこちで見受けられました。受付で来場者に配られた「メニュー」には、この日の企画ラインアップが解説されていて、その盛りだくさんの内容に気持ちがワクワク。1時間後の午後8時からギャランスさんが姿を見せると知って、2階へ階段を上がっていきました。
2階で待っていたもてなしは、秋冬のテーマ「Nostalgic Simplicity(ノスタルジック シンプリシティー)」にインスパイアされたフードとドリンク。どこかなつかしさを覚えるパーティーフードを口にしながら向かったのは、「シルクスクリーン」のコーナー。こちらではシルクスクリーンの機械を使って、「GALLARDAGALANTE」のオリジナルTシャツにギャランスさんが手描きした「my story my fashion」の文字をプリントしてもらえました。文字色や生地色を選ぶことができて、出来上がった品は帰り際にプレゼントしてもらえるという、うれしいお土産サービスです。
隣のエキシビションスペースではギャランスさんの幅広いクリエイター活動を紹介。彼女が手掛けたアートプリントやポスターが集められていました。文房具好きであるギャランスさんが「Rifle Paper Co.」と共同で発表しているステーショナリーも展示。フォトグラファーである彼女がこれまでに出会った大勢の著名人とのエピソードも披露されていて、憧れシューズのデザイナーとして名高いクリスチャン・ルブタン氏と語り合っているシーンもありました。ギャランスさんのフィールドの広がりをあらためて感じる機会となりました。
今回のトークショーでは来場者も質問ができる仕組みになっていました。あらかじめ配られた質問カードに、ギャランスさんへ尋ねたい事柄を書いてエントリーする仕組み。後の公開インタビューではエントリーされた質問の中から彼女への質問項目が選ばれるとあって、来場者は思い思いに興味のある質問を書き込んでいました。トークショーでは主催者や司会者が質問を決めるケースが多いのですが、こういう参加型のスタイルにもそれを受け入れるギャランスさんのオープンマインドが感じられました。
フロアに流す音楽はギャランスさんのお気に入りである1960年代のフレンチミュージックが選ばれました。彼女の好きなアーティストをモチーフにした楽曲がこの日にふさわしいムードを醸し出していました。Julia ShortreedさんとYurifa MatsumotoさんがDJを担当し、ギャランスさんの登場前から徐々に気分を盛り上げていきました。
午後8時になり、いよいよ主役のギャランスさんが会場に姿を現しました。その瞬間、来場者の興奮はピークに。フルパワーのエアコンですら効き目が出ないほどの熱気に包まれました。
この夜のギャランスさんは白のTシャツに細身のジーンズを合わせ、「M MARTIN」のスリーブレス・ロングコートを重ねた着こなしで登場。スーパーロング丈のジレ(ベスト)にも見えるキャメルカラーの羽織り物がキーアイテムに選ばれていて、さすがのトレンド感を演出。おしゃれスナップを撮りたくなるような、モードとヌケ感の両立にうならされました。気負いのなさやフレンドリーな雰囲気が目に残ります。足元をピンヒールで引き締めて、全体のバランスを整えていたのも、抜かりのない目配りと映りました。
こういったイベントではメインゲストと来場者は距離を置くように仕切られがちですが、気さくなギャランスさんは来場者が写真を撮る時間をしっかり取って、しかも終始、ニコニコと笑顔を浮かべてフラッシュを浴びていました。やがて自分からもiPhoneを取り出して撮影を始めました。世界でも指折りのインスタグラマーである彼女らしい心遣いに来場者は特別な気分を一段と高めているようでした。
トークショーが始まり、司会者が「マルチな分野で活躍する今のポジションを、どうやって手に入れたのでしょうか」と尋ねると、ギャランスさんは飾らない口調でこれまでのステップを語り始めました。ファッションが大好きで写真やイラストも好きだった彼女はほとんど独学で自分の表現を築き上げていったそうです。アートスクールに通ったことのなかった彼女は駆け出しの頃、いろいろな所に仕事を求めて応募したのですが、相手にしてもらえない日々が続きました。
でも、彼女がすごかったのは、そこで諦めなかったところです。「悲観的にならず、自分が夢中になれることを続けることが大事」と言うギャランスさんは自らのブログを足場に10年間にわたってファッションスナップやイラストの発信を続け、高い評価を得るまでに至りました。自分のおしゃれにとどまらず、他人がそれぞれに選ぶファッションの見せ方に興味を持っていたという彼女の視点はやがて広く支持を受けるようになっていきます。
この日、彼女が発した「キープ・ゴーイング」や「ドゥー・ドゥー・ドゥー」という言葉が示す通り、最初の気持ちを変えないで、選んだ道を突き進むことが成功につながるというメッセージは来場者の心に響いたようです。「私をナイスに扱ってくれない人の存在につまずくこともあった」と率直に認めるギャランスさんは「諦めないエネルギーを持っていること」「本能を信じて好奇心に従うこと」などの大切さを語り、会場には静かな共感の輪が広がりました。
彼女がくれたアドバイスには、耳を傾ける価値のあるものがいくつもありました。たとえば「パーフェクトを求めすぎないように」というのも、重要な助言でした。ついつい完璧を求めすぎて、小さなミスやトラブルで全てが嫌になってしまうことがありますが、彼女は完璧さよりも「継続が大事」と強調。自らの表現スタイルも「根本的には過去10年間、ほとんど変わっていません」と述べました。自然な気持ちで長く続けられるような対象や方向性を見付けることがやがての成功を導くという、経験に基づくメッセージは十分な説得力を帯びていました。
ギャランスさんはファッション以外にビューティーや食べ物、旅行、インテリアなどにも強い興味を持っています。だから、彼女のブログもインスタグラムも単なるファッションスナップ集ではなく、彼女の関心を映したライフスタイル全般を取り上げています。こういったアプローチを彼女はコミュニケーションの一種だと考えているようです。10月に出版される著書ではそういった幅広い意識が自らの言葉でつづられる見込みで、ページをめくるのが今から楽しみになってきます。
来場者からの質問カードを入れた箱の中から、ギャランスさんがおみくじのようにカードを引いてその質問に答えるコーナーでは、パーティー出席が多い彼女らしく、「これまでにパーティーで出会った一番の有名人は?」という質問も出ました。ギャランスさんは一番有名ということではないけれど、特別に印象的だった人物として、女優のドリュー・バリモアさんを挙げました。パーティーで初めてドリューに会ったとき、向こうからいきなりハグされて、ギャランスさんはびっくり。そして、ドリューが言った言葉は「私、あなたのブログの大ファンなの」。とてもうれしかった思い出として今も記憶に残っている出来事だそうです。
一方、「クレージーだったパーティーの体験は?」という質問には、クレージーかどうかはわからないけれど、と前置きしたうえで、気心の知れた友達だけで集まった、彼女のバースデーパーティーと答えました。カラオケでマドンナやリアーナの曲を歌って、みんなで盛り上がったそうです。数え切れないほどのパーティーに招かれる立場でありながら、身近な友人たちとの集まりを「格別に心地よかった」と紹介するあたりにも、気取りのない人柄がにじみ出ていました。
「写真を撮る際に気を配っている点を教えてください」という質問には、「被写体を動かすこと」と答えました。最初の立ち位置やアングルや撮影シチュエーションに満足してしまわないで、太陽の光が一番いい感じで当たって、被写体がきれいに写るポジションやアングルが見付かるまで、被写体に動いてもらうのだそうです。撮る側の都合だけでシャッターを切るのではなく、撮られる側にも納得してもらえる工夫と努力を惜しまない姿勢が感じ取れます。
トークショーの後には来場者1人1人がギャランスさんと一緒に写真を撮ってもらえるフォトタイムが設けられました。有名ゲストの場合、ここまでプライベート感の高い対応が実現するのは珍しく、来場者は夢のツーショットに満足げでした。私も2人で撮ってもらったのですが、ニューヨークコレクションの会場でよく見掛けていて、過去におしゃれスナップを撮らせてもらったことを話すと、ギャランスさんは「じゃあ、また次の9月にNYで会おうね」とニッコリ。幸せな気分になりました。
全体を通じて最も印象深かったのは、ギャランスさんの笑顔。彼女の自然なほほえみはハッピーの連鎖反応を引き起こし、会場内はいつしか幸福感に包まれていきました。飾らないキャラクターや偉ぶらない姿勢、相手を思いやる気配りなどが来場者の心にしみわたって、「幸せオーラのおすそ分け」を全員がもらえたような素敵な一夜となりました。
イベントのお開きに当たっては、さらにおみやげも用意されていました。来場した際に選んだシルクスクリーン・プリントのTシャツに加え、「GALLARDAGALANTE」特製のフェイクファーのクラッチバッグまで全員に贈られ、心に残るパーティーの思い出になりました。
この集まりに招かれた来場者はこの体験を専用のハッシュタグ「#GG_GD」でシェアすることになっています。それぞれが自分スタイルで発信したこの日の記憶はSNS上でさらに広がりを見せる仕掛けで、こういう演出も、ブログからスタートし、インスタグラムでもフォロワーの多いギャランスさんを迎えてのイベントにふさわしい試みでした。
特別にリッチな家庭に生まれ育ったわけでもなく、今でも気張りすぎないスタイリングで支持を集めるギャランスさんは、誰もが親近感を抱きやすい、リアルな「等身大」スタイリングのお手本と言えるでしょう。彼女がイメージアイコンになった15-16年秋冬シーズンのアイテムでも、今の時代感覚やおしゃれマインドにふさわしいテイストが軸になっているので、すでに入荷が始まっている「GALLARDAGALANTE」の各ショップでそのムードを確かめてみてください。