RIE MIYATA
等身大の着こなし達人、ギャランス・ドレの魅力に迫る
こんにちは。ファッションジャーナリストの宮田理江です。
「ガリャルダガランテ」が提案する新しいファッションのスタイルが「My story, My fashion」。単に装うだけでなく、生き方から広がっていくその人らしいスタイル。誰もが「自分らしいスタイルとは?」と思うときがあるでしょう。今回は、そんな問いかけに彼女なりの「答え」を示してくれている、魅力的な女性をご紹介しましょう。
フォトグラファーやイラストレーターとして知られるGarance Dore(ギャランス・ドレ)さんは、「ガリャルダガランテ」が2015-16年秋冬シーズンのイメージアイコンに迎えた人物です。ニューヨークに拠点を構えつつ、世界中を飛び回るギャランスはコレクション会場でもよく姿を見掛ける有名人。写真を撮る一方で、自らの着こなしも.格好のお手本として常にカメラを向けられる存在です。
マルチタレントと呼ばれるような表現者たちの中でも、ギャランスは特別。写真をはじめ、イラストやビデオ、文章など、様々な手法で才能を発揮しています。モード界のビッグブランドとのコラボレーションも数多く手掛けてきました。「文房具好き」だという彼女らしくステーショナリーやギフトなどのブランドも立ち上げています。
ギャランスのスタイリングはブログやインスタグラムを通じて大勢のフォロワーから支持を受けています。気負いや見栄を感じさせず、趣味のよさや気取らない態度を印象づける「エフォートレスシック」テイストの着こなしは、リアルコーディネートの理想形のよう。世界で最も影響力のあるファッションブロガーの一人と言える一方で、その活動フィールドや発信力はもはやブロガーの枠をはるかに超えています。
独自のおしゃれ感覚を生かしたコラボの実績が豊富なギャランスですが、今回の「ガリャルダガランテ」とのケースは単なるコラボではなく、「等身大のファッショニスタ」である彼女をシーズンアイコンに位置付け、ゆるやかに連携する試みです。ギャランスは15-16年秋冬シーズンのイラストとグラフィックも担当しています。
皇帝ナポレオンの故郷として知られる、地中海に浮かぶコルシカ島(フランス領)で生まれ育ちました。イラストレーターを夢見ていたギャランスはいくつかの仕事を経て、2006年にブログをスタート。このブログが彼女の人生を一変させました。
ブログでのストリートスナップ紹介から注目を浴びたギャランスですが、今や彼女自身が立派なブランドと言えます。多くのブランドが彼女とのコラボを望むのは、リアルスタイリングで多くの読者・フォロワーから共感を得ている存在だから。有名になった今でも、オフショットではノンシャランとしたミックスコーディネートやフレンドリーな表情を見せています。
ニューヨーク・タイムズでその着こなしが絶讃されたのをはじめ、有力なモード誌でもしばしば彼女の特集が組まれています。10月には初の本格的な著書『Love Style Life』を出版する予定です。写真やイラストがたくさん詰まった内容になるそうです。
彼女が自分で書いている通り、ギャランスについて知りたければ、ブログ(http://www.garancedore.fr/en/)を読むのが一番分かりやすいでしょう。たくさんの記事が公開されていますが、目次のページを見て感じるのは、彼女の美的センスのよさ。写真と見出しがバランスよく配置され、自然に目が引き込まれます。写真の美しさや構図の見事さはさすがの腕前。文章も妙に飾ったところがなく、人柄を映し出しています。
一方、正方形の写真が文字抜きで並ぶインスタグラム(https://instagram.com/garancedore/)のほうはさらにギャランスのキャラクターに近づけます。いわゆるファッションブロガーの写真には「私を見て」とばかりにセルフィー(自分撮り)写真での着こなし紹介が中心になることが珍しくないのですが、ギャランスの場合、そんなことはありません。むしろ本人の露出は控えめ。街角のなにげないショットや、旅先の美しい眺めなどが多く、ニューヨークの風景も彼女の手に掛かると、別の表情を帯び始めます。
旅行好きな彼女のライフスタイルを示すトラベルフォトは眺めているだけでも心が弾んだり、リゾート気分が味わえたり。気持ちを穏やかにしてくれる雰囲気の写真が多いので、ついつい一番下まで全部のショットを見てしまいます。
ファッショニスタらしくパーティールックの写真もありますが、普段のリラクシングな着姿のほうが目立ちます。そんなギャランスのプライベートコーデは、パリジェンヌ風エッセンスを取り入れつつ、ニューヨーカー流の自在なアレンジを利かせる装いを提案している今季の「ガリャルダガランテ」のテーマに通じるところがあります。パリ暮らしを経て、ニューヨークに移り住んだ彼女ならではのボーダーレスなミックスコーディネートは見事なヌケ感や伸びやかさ。靴が好きなのか、足元のショットが多いのも興味深く映ります。
今回のプロジェクトに合わせ、ギャランスが来日する1夜限りのエキシビションが「ガリャルダガランテ表参道店」で開催されます。着こなしだけではなく、著書のタイトルにある通り、職業や国境などにしばられないしなやかな生き方そのものがスタイルになっている彼女の実物に接して、キャラクターを深く感じ取れるまたとないチャンスとなりそうです。こちらは取材リポートを後日、あらためてご紹介したいと思います。
彼女が「ガリャルダガランテ」の15-16年秋冬コレクション用に描いたイラストはスタイリッシュでありながら、どこか静かなユーモアを宿していて、コレクションの雰囲気を別の形で表現してくれています。秋冬シーズンの本格化につれて、みなさんの目に触れる機会も増えてきそうです。