BLOG

RIE MIYATA

ムートンをデイリーに着こなす楽しさ 秋冬コーデの幅が広がる「着こなし&巻き方」も伝授

1

こんにちは。ファッションジャーナリストの宮田理江です。

月替わりのテーマを設定している、ガリャルダガランテ ルミネ新宿店の特設コーナー「セレンディピティ」が11月のテーマに選んだのは、これからのシーズンに頼れる「ムートン(羊のファー、レザー)」。英国発のファーブランド「KARL DONOGHUE(カール ドノヒュー)」を中心にたくさんのタイプをラインアップしました。普段使いしやすい、モダンなデザインを得意とするデザイナーのカール・ドノヒュー氏はムートンとの新しいつきあい方を提案してくれています。

ムートン専門の売り場があまり多くないこともあり、ムートンをじっくり選ぶチャンスはなかなかありません。今回は定評のある「カール ドノヒュー」の逸品がブース一杯に集められている点でも貴重な機会。幅広いラインアップの中から選べます。ムートンとの「セレンディピティ=偶然の出会い」を実現してもらいたいたいという思いから企画されたそうです。

ムートンはもこもことかさばったイメージを持たれがちですが、ドノヒュー氏はシルエットやボリュームを研究して、もたついて見えにくい新ルックに導いています。ゴージャスすぎるといった印象とも無縁の、手持ちウエアと組み合わせやすいデザインです。デニムやスニーカーなどにも合わせやすいから、今までのイメージが変わるはずです。

2

同じ羊のファーやレザーでも、ラムは子ども羊で、ムートン(シープ)は成長した羊という違いがあります。それぞれに質感や風合いが異なるので、持ち味を生かしたアイテムに使われています。こちらのVネックジャケットはカシミアタッチのラムスキン(革)を用いて仕立てました。ラム特有のやわらかい毛質がやさしい表情を生み出しています。この穏やかムードを生かして、デニムと引き合わせると、互いの素材感が引き立ち、こなれた着こなしに仕上がります。ウエストに巻いた太めのレザーベルトが全体を引き締めています。

3

「カール ドノヒュー」の人気アイテムの中でもとりわけファンが多いのがこちらのようなロング丈のジレ(ベスト)。リバーシブルで使えるモデルです。膝のあたりまで丈があるので、縦落ち感を印象づけやすく、全身がスレンダーに映ります。ブラウスやシャツをはじめ、ワンピース、さらにはコートの上に重ねることもできる万能アイテムです。素材はカシミアタッチのラムスキンで、ソフトな毛質がキャラクターまでやさしく見せてくれそうです。

4

ロングジレは秋冬の重ね着に組み込みやすい点でも重宝します。たとえば、こちらのようにタートルネックのニットセーターに重ねれば、格上の着こなしに。セーターだけではあっさりして見えがちですが、カシミアタッチのラムスキンならではのノーブル感が加わって、手持ちのセーターから別の表情が引き出されています。アッパー部分とボトム部分をパネリングして変化をつけた配色が印象的なデザインでこちらもリバーシブル使いが可能です。

5
6

実はレザーとファーは好相性。右に見えているレザーの薄手コートの上から、ムートンジレを重ねると、左のコーディネートに様変わり。冷ややかでつやめいたレザーの質感と、ぬくもりや落ち着きを備えたファーの味わいが際立っています。このロングジレはリバーシブルになっているので、さらに別のムードを添えることもできます。裏側は縁取りの部分だけにふわふわのファーがのぞき、カジュアルな着こなしにも組み込みやすくなります。

7
8

今回のセレンディピティに用意されているムートンジレはシルエットも様々。ブルゾンのような形のレザーアウターの上に重ねているのは、フロントがジップアップのムートンジレ。スリーブレスのブルゾンやパーカのような感覚でまとうことができます。前を開ければ、下に着込んだウエアの見える面積が広くなる分、レイヤードが立体的に決まります。レザーとムートンは風合いが大きく異なるから、なおさら奥深い見え具合に整います。

9

コートやジレのイメージが強いムートンですが、今回はバリエーションが豊富。たとえば、こういったブルゾンのようなフォルムで、毛足がふさふさという、珍しいタイプも用意されています。こちらは、パリ発ブランド「SPRUNG(スプラング)」の品です。襟周りや正面打ち合わせにもファーがたっぷりだから、リッチな着映え。裾や袖先にはムートンらしい表情がのぞき、1着でムートンの魅力をフルに表現できそうです。

10

ムートンのよさは表面と裏面でがらりと印象を変えられるリバーシブルにもあります。こちらもSPRUNGのアイテムとなります。短い毛がたっぷり付いていて、ほっこりした雰囲気が出せる面と、スムーズなレザーの素材感が気負わないムードを生む面の2種類を使い分ければ、自分好みのスタイリングがいっそう楽しめそう。ネイティブアメリカン風の変形ハウンドトゥース(千鳥格子)柄が動きを添えています。表と裏で柄のポジションが違う点も着こなしを弾ませてくれます。

11

毛足の表情を生かした、ゴージャスなムードもムートンの持ち味です。日本ブランド「HERITANOVUM(ヘリテノーム)」から登場した、長めのファーを遊ばせたジャケットは、これ1枚で申し分のない存在感。シンプルなウエアで合わせるだけで様になりそうなグラマラスな逸品です。毛先があちこちに跳ねる感じがかえって無造作なムードを寄り添わせていて、普段使いしたい気分に誘われます。

◆チェック柄×ファー、ムートン

12

ファーの定番的アイテムに、ストールやマフラーといった掛け巻き物があります。ファーストールは顔周りにリュクスを薫らせてくれるので、上手に取り入れたい冬の小物。手持ちウエアの雰囲気を変えやすい点でもアレンジにうってつけ。「カール ドノヒュー」でもストールは定番的な人気アイテムです。ブームが続くチェック柄は、正統派のジャケットに迎え入れると、さらに英国テイストを打ち出せます。ファーストールを添えて、品格もプラス。「チェック柄×ファー」はこの秋冬らしいコーデです。

13

同じくチェック柄ですが、こちらはパンツで生かしています。ロングジレが腰から膝上にかぶさって、ミックステイストに仕上がりました。ジレの下にはハイネックのニットセーターで合わせています。チェック柄のオーソドックス感、セーターの伸びやかさを、両方に重なったジレがグラマラスにまとめ上げていて、縦落ち感も強調。あたたかみと上質感が同居するグッドルッキングに整っています。

14

ジャケットやコート特有のカッチリ感とは好対照のふんわりフェイスを持つムートンは、羽織り物の表情を変える最適のパートナー。チェック柄コートの上からジレを重ねるだけで、こんなにも雰囲気が一新。コート単体ではきまじめに映りそうなところですが、ファーの素材感がナチュラルさやぬくもりを足し込んでくれる分、紳士服ライクなチェック柄アウターにも、どこかフェミニンな風情が漂っています。

◆フラワー柄×ムートン

15

ムートンはアウター以外とも好相性を発揮します。オントレンドの花柄を大胆なビッグモチーフであしらったブラウスに、ワインカラーで染めを施したジレを重ねました。沈んだ色味で見せる「ダークフラワー」プリントがヴィンテージ風味を感じさせます。そこに華やぎとぬくもりを帯びたムートンジレが乗って、ムードに奥行きが出ています。ボトムスをあえてデニムであわせることでこなれた雰囲気に。

◆コーデュロイ×ムートン

16

復活がめざましいコーデュロイはパンツが主な使いどころ。もともと柔和な質感を持つコーデュロイだけに、ムートンを組み合わせると、さらにハートウォーミングな雰囲気が強まります。タートルネックのニットセーターにムートンジャケットを重ねて、ふわもこ感を強調。ソフトなイメージを印象づけられます。ノーカラー(襟なし)のファージャケットは量感が抑え気味だから、内側に着るトップスを選びません。

◆レース×ムートン

17

春夏向きのイメージがあるレースですが、この秋冬は賢くレイヤードに組み込むのが着こなしの新パターンに浮上しています。透けるレースで仕立てたドレスには、素材感が全く異なるムートンが意外になじみます。ジレを羽織れば、防寒面でも心配いらず。ファーのつやめきがレースの繊細さを引き立ててくれます。足元はフェミニンなシューズで整えて。

18

さて、ここからはムートンを実際に着こなしに生かすテクニックやアレンジ法をみていきましょう。まずはストールの巻き方から。きっちり巻くことにとらわれすぎないで、あえて無造作に、くるっと巻いてしまっていいのです。ムートンの場合、なめしてある裏地部分が見えてしまっても、むしろ違うムードが出て、おしゃれに映ります。「カール ドノヒュー」の場合は裏までカラーリングが施されているので、かえってこだわりを感じさせます。

19

首の周りや、肩に掛けて巻くという印象が強いのですが、このような感じでボタンを留めて「たすき掛け」にすることもできます。身頃を斜めに横切るので、ドラマティックなインパクトが生まれます。肩周りだけではなく、ボディーの正面にも立体感が出て、メリハリの効いた着映えに仕上がります。着慣れたウエアに重ねるだけで、見た目が大きく変化するから、長い秋冬を通じて、同じストールを繰り返しまとう場合に、イメージを変える小技として役立ちます。

20

パッと見た感じでは、ファーのボレロを着ているように見えるでしょう。でも、実はムートンのストール。首に巻いたり、肩から掛けたりといったイメージのあるストールですが、このように輪の部分に腕を通せば、ボレロ風にまとえます。ノースリーブワンピースなどの上に合わせればパーティーシーンにも使えるテクニックです。

21

自然に垂らすだけでも、羽織り物ライクには見えますが、ベルトを使うと、さらに服のように見えやすくなります。首に垂らしたストールの中程にベルトを巻いて締めるだけ。正面をそろえておけば、ノースリーブのジャケット風に映ります。ベルトを巻いてあるから、ストールがずり落ちないのもいいところです。

22

見慣れた扱い方をほんの少しずらすだけでも、ストールの表情を深くできます。多くの人は両方の肩に均等な長さでストールを掛けたがりますが、わざとこの左右均等のバランスを崩せば、オリジナルな操り方に変身。こちらのように片方の肩だけに乗せて、余りは長めに垂らしてみましょう。あえて引き出した不ぞろい感が印象を強くしてくれます。垂らした部分が普通よりも長くなるおかげで、自然な落ち感が生まれ、ほっそりシルエットに映るのもこのアレンジの長所です。

23
前後のバランスを崩す手もあります。通常は正面方向からの視線を意識して、ストールの見え具合を整えますが、フロント側は胸元に引っ掛ける程度にとどめ、残りを思い切って後ろに垂らすと、背中側にドラマが生まれます。背中側で結ばないで、自然に垂らすと、のどかな景色に。左右の長さもわざとアンバランスにしたほうが動いた時に揺らめくのでフェミニンに映ります。

24
「首・肩」が定位置ですが、そのルールも絶対ではありません。ぐっと下にずらして、腰に巻いてもいいのです。カーディガンなどを腰に巻いて、正面で袖を結ぶアレンジのストール版とも言えるでしょう。正面で余った端はそのまま垂らしてしまいましょう。垂れ下がった端が縦に長いイメージを呼び込んでくれるからです。そのままでは落ちてしまうので、ストールの上からベルトを巻きます。その際、細めのベルトを使うほうがほっそり感を出せます。

25
26
最後はややトリッキーな操り方をご紹介します。使うのは細めのベルト。これを肩に掛けて輪っかにし、脇の下にできた輪っかの下端にベルトを引っ掛けるのです。ストールは脇下から膝あたりにかけて垂れ下がる感じになります。近頃はファーでくるんだバッグが登場していますが、こちらはファーがさらに長く垂れる分、縦長感が強まりアクセサリーのよう。暖かい日中はこうしておいて、夕方以降に寒くなったらベルトから外して、本来の首や肩に迎えるという、1日の中でのスイッチングにも使えるテクニックです。

27
28
29

羽織り物やジレに加え、ストールをはじめとする小物類も今回のセレンディピティには充実しています。小物のワンポイント使いは装いのアクセントになってくれるから、コーデに組み込むメリット大です。ムートンのルームシューズは足元がリアルにほっこり。優雅なひとときを過ごせそうな、冬場に頼もしいアイテムです。チャーム類はムートンの素材感が生きる使い方。ふわふわ、もふもふの手触りはつい触りたくなってしまいます。着姿にもあたたかみを添えてくれるので、シンプルなコートルックの硬さをやわらげるのにも役立つはずです。「ラリエッタ」と名付けられたバッグチャームは足部分のメタルチェーンが揺らめいてお出かけのお供に連れ出したくなる愛らしさです。

30
ガリャルダガランテのスタッフのみなさんと「カール ドノヒュー」のアイテムをベルトで巻いたり、片側に掛けてみたりと思い思いにコーデ。シャツやニット、スウェットなど、みなさんそれぞれに違うトップスですが、どれにも自然となじみ、様々なムードを生み出せることをあらためて実感しました。

31
取材を終えて思ったのは、ムートンをデイリーに着こなす楽しさです。ファーと聞くと、気負ったゴージャスな装いを連想しがちですが、今回のセレンディピティに集められたのは、どれも普段から自分らしく着こなしやすいアイテムばかり。手持ちのニットやデニムとミックスして、「いつもよりワンランク上の普段着ルック」を簡単に組み立てられます。実際に店頭で手に取って、羽織ってみて、秋冬コーデの幅を広げてみてください。

NEW ENTRY

Shop Staff Blog