RIE MIYATA
新発想スカーフ「manipuri(マニプリ)」の魅力 7月のセレンディピティ
こんにちは。ファッションジャーナリストの宮田理江です。
今年の夏は猛暑が続いていて、おしゃれにも涼しさが欲しくなります。ただ、さっぱりした服ばかり着ていると、飽きてしまうこともしばしば。そんなときに着こなしのスパイスに使えるのがスカーフです。アクセサリーやジュエリーのような重たさがないので暑い夏場でも軽やかに過ごせます。
スカーフというと首に巻くイメージが強く、暑さを心配する人もいるでしょう。今回は、そんなイメージを覆すような素敵なスカーフ使いの提案です。大人気のブランド「manipuri(マニプリ)」のスカーフが7月の「セレンディピティ(ガリャルダガランテ ルミネ新宿店の月替わり特設コーナー)」にお目見え。そもそもガリャルダガランテは以前からスカーフに強いので、この企画は頼もしい限り。筆者である私もスカーフは割りと得意分野とあって、今回のテーマ「SCARF!SCARF!SCARF!」は楽しみでした。マニプリのスカーフに、ガランテならではの知恵を重ねてスタイリングを楽しんでいきましょう。
「マニプリ」は日本のブランドです。1940~70年代のヨーロッパで使用されていたヴィンテージスカーフのコレクターであるデザイナーが2012年に立ち上げました。ブランド名の由来は、インドのmanipur(マニプル)州で毎年11月の満月の日に行われるホーリー祭。花や色粉を舞い上げながら踊るダンスの風景がスカーフの色彩に似ていると感じたことからブランド名が誕生しました。
ヴィンテージスカーフの雰囲気を帯びた風合いがファンを増やしています。縁を丁寧に手仕事で手巻きの三つ巻き縫い(よりぐけ縫い)で仕上げているところにも、細やかな心配りがうかがえます。プリントも手捺染(てなっせん)という伝統的な職人技で染めているので、配色がきれいに染め上がっています。機械で大量生産したようなスカーフとは別物の、ヒューマンなたたずまいが着こなしの表情を深くしてくれます。今回のセレンディピティでは「マニプリ」のよさを引き出す、様々な工夫が施されていて、スカーフ使いの奥深さに引き込まれます。
スカーフの模様というと、抽象的な幾何学模様やクラシックな紋様風が思い浮かびます。どの部分を見せても構わないよう、全体に均質な見え具合を意識したデザインが多くなっています。ところが、「マニプリ」のプリント柄はまるでアートのよう。1枚のスカーフの中でも部分ごとにモチーフが異なっているタイプが多いおかげで、スカーフを巻いた際、表に見える柄がその都度、違って、使い飽きません。どこを表に出すかを自分で計算しながらスタイリングできるから、着回し効果も高くなっています。
たとえば、猫の絵柄でも全体に同じモチーフを並べるのではなく、猫の仕草や顔つきを何種類もの異なった構図やタッチで描き込んでいるので、ストーリーが感じられます。猫が持つ独特の多面性や気まぐれさまで写し込まれているかのようです。どの絵柄も決して主張しすぎてはいないのですが、それぞれ型にはまりすぎていなくて、ありきたりのスカーフとは違うと思わせるところがあります。
バンダナ柄のスカーフもコットンではなく、シルクが使われています。ヴィンテージ好きのデザイナーだけあって、アンティーク風の柄に目新しいタイプがたくさんあり、着姿に程よい懐かしさを忍び込ませてくれます。レトロやヴィンテージがトレンドになっている今、手持ちワードローブにスカーフを添えるだけでノスタルジーをまとえるのはうれしいところです。
夏はさっぱりした白のTシャツやタンクトップに柄物のスカーフを乗せて、イージーな見え具合をおしゃれに味付けするテクニックが使えます。近頃は色や柄でグラマラスなムードを押し出すトレンドが勢いづいていますが、面積が広い服で取り入れるのにはちょっと勇気が要ります。このように、ポイント使いができるスカーフなら、服では挑戦しにくい派手めの色・柄も試しやすくなります。
今回のセレンディピティではスカーフの様々な操り方を提案しています。まるでギャラリーのようにスカーフを立体的に表現。ショップでこんなアレンジを利かせた環境でスカーフをじっくり眺める機会はなかなかないでしょうから、今回は貴重なチャンスと言えます。眺めて表情を楽しむだけではなく、実際に触って風合いも味わってみてください。とりわけ、シルクバンダナの意外な質感には驚かされるでしょう。
ここからは、スカーフのアレンジ方法を見ていきましょう。首に巻くのは当たり前として、今回は首の後ろで結んでホルターネック風にトップスにオンしたり、タンクトップの上から垂らして服の立体感を高めたりといった「着るスカーフ」のバリエーションをいくつも提案しています。
ホルターネックは腰の後ろでも結んでおくと、無用にひらひらしないうえ、背中側でもアクセントになります。タンクトップは鎖骨の高さで左右それぞれの細い部分にスカーフを結んで、残りを正面に垂らすだけ。白無地のタンクトップにも柄物スカーフがムードを添えてくれます。ジーンズに添える手もあります。脇のベルト通しにスカーフを通して、軽く結わえて垂らせば、デニムルックにリズムと華やぎが加わります。
ぜひ試してほしいのが、サッシュベルトとしてのアレンジ。復活してトレンドアイテムになったサッシュベルトですが、割とプレーンな無地タイプが多く、人とかぶりがち。たっぷりしたスカーフを束ねてウエストに巻き、結び目を背中側に回せば、スカーフならではの色・柄が目を惹くオンリーワンのサッシュベルトに早変わりします。
洋服とマッチさせるアレンジにはもっとたくさんの選択肢があります。意外と知られていないのが、スカーフ2枚をつなぐ方法です。異なる2枚のスカーフを用意して、両方の角を結び合わせます。こうして大きな2枚つながりになった状態で、結び目を首の後ろに回してスカーフ全体を前に垂らすと、左右で異なる柄のトップス風の見栄えに。シンプルな白Tシャツにオンして、シルクのつやめきを印象づけるお手軽レイヤードに仕上げました。
「着るスカーフ」だけではありません。スカーフはバッグにもなります。風呂敷風に端をキュッと結んで、気取らない見栄えの即席バッグにスイッチ。荷物も涼しく持ち運びたい夏場のお供にぴったりです。
バッグの雰囲気を変えるムードチェンジャーとしてもスカーフは重宝します。いつものバッグも、スカーフの添え方次第で違って見えます。スカーフの種類で印象が変わるのに加え、バッグの持ち手に巻くか、ボディーに巻くか、長く垂らすか、コンパクトに結ぶかなどのチョイスによって、自在に「着せ替え」が可能。その日の気分でお好みの「バッグ×スカーフ」が組み立てられます。
セレンディピティのブースでは単にたくさんのスカーフを並べてあるだけではなく、スカーフに詳しいガリャルダガランテのスタッフが考えているので、スタイリングやアイテム選びでアドバイスをもらえます。「この巻き方はどういう手順なんですか」といった質問にも答えてもらえます。
「マニプリ」のスカーフの中でもとりわけオリジナリティーを感じさせるのが、こちらの細長いスカーフ(84.5センチ×5センチ)。実は筆者も愛用している品です。ありそうで、なかなかないこの形。首にちょこんと巻くと、とてもいい感じなのです。素材がシルクなので、小ぶりながら上品なムードを醸し出してくれます。
細さを生かしたアレンジがスタッフの永井路子さんがされていたこちらです。腕時計の本体(文字盤部分)だけにスカーフをつけて手首に巻きます。本来のベルトとはまた別の若々しくアクティブな雰囲気が生まれています。もちろん、選ぶスカーフ次第で異なるイメージを呼び込めるから、使いこなしたい小技です。
まだまだスカーフの出番は尽きません。たとえば、髪を束ねる飾りにも使えます。ポニーテールにしてそのまま巻いている人を見かけますが、ほどけたり崩れたりが少し心配。でも、ヘアゴムとスカーフを最初からセットにして使えば、しっかり形を保ちやすくなります。こちらはスタッフの私物のマニプリスカーフです。あっという間にセットできるから、髪がまとまりにくい日や、じっくり髪を整えていられない日に便利です。ゴムは内側に隠れているので、外からはスカーフしか見えません。
スカーフをバッグの持ち手にするアイデアは誰しも真似してみたくなります。「自分でうまくできるかな」と不安に感じる人には、ガリャルダガランテ・オリジナルの黒バッグに「マニプリ」のスカーフをセットにしたレディーメイドのセットを用意しました。バッグとスカーフのセットで2万8000円(税抜き)です。あらかじめバッグとスカーフの相性を考えて組み合わせてあります。実際にどんなスカーフが添えられているのかは、実物を見てのお楽しみ。個数限定での発売ですから、レア感もたっぷり。バッグからスカーフを外しても使えます。
ブースで紹介している多彩なスカーフ使いを、3人でお披露目してみました。プランナーの杉江亜季子さん(向かって左)はスタンダードに首に巻いています。真ん中の筆者はウエストにコルセット巻き。永井さん(右)は頭に巻いてエスニックムードに。3人とも「マニプリ」のスカーフを巻いたバッグやス、カーフでつくったバッグを持っています。ブースのすべてがスカーフがらみとあって、すっかりスカーフの世界に浸り込めました。
このセレンディピティは8月16日までガリャルダガランテ ルミネ新宿店で開催中です。首に巻く以外のアレンジで、夏の着こなしにレディーライクな風情やドラマティックな雰囲気を添えられるから、この機会に「皆さんの知らないスカーフの世界」を楽しんでみてはいかがでしょう。