2013. 10. 11 映画『ニューヨーク・バーグドルフ 魔法のデパート』に学ぶ、おしゃれの極意 こんにちは。ファッションジャーナリストの宮田理江です。 モード発信地と呼ばれる世界の都市には、それぞれに「聖地」とでも呼ぶべき百貨店やセレクトショップがあります。ニューヨークの場合、誰もが認める「聖地」は5番街に本店を構える老舗百貨店の「バーグドルフ・グッドマン(Bergdorf Goodman)」でしょう。 (c) 2012 BG PRODUCTIONS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED. (c) 2012 BG PRODUCTIONS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED. 映画『ニューヨーク・バーグドルフ 魔法のデパート』はこの夢の館の成り立ちや魅力を追ったドキュメンタリー作品です。10月26日(土)に公開が決定しました。 ファッションは毎シーズンのランウェイの上でだけ発信されるのではなく、実際に商品に触れることのできる売り場でも日々、モードが紡ぎ出されています。さらに、真に接客の極意を知る売り場のプロフェッショナルがその魅力を伝え、フィティングルームに案内し、お客様本位でアドバイスを提供します。このような一連のやりとりを経て、服や靴やアクセサリーは誰かの所有物となり、そのオーナーに満足と美をもたらすわけです。 この映画はおしゃれに興味のある人であれば、全員に見てもらいたい価値を備えています。1軒の百貨店の物語ですが、トップデザイナーやファッショニスタたちがいかにこの場所を愛し、尊敬しているかが伝わってきます。 マーク・ジェイコブス氏 (c) 2012 BG PRODUCTIONS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED. クリスチャン・ルブタン氏 (c) 2012 BG PRODUCTIONS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED. 出演者は「シャネル」のデザイナーとして名高いカール・ラガーフェルド氏や、「ルイヴィトン」のデザインも任されているマーク・ジェイコブス氏、憧れシューズのマエストロ(巨匠)、クリスチャン・ルブタン氏といった、掛け値なしのビッグネームぞろい。それぞれにとってのバーグドルフの思い入れやエピソードが本人の口から語られます。 実はバーグドルフは本店しかありません。有名になると、手広く支店網を拡大していくのが百貨店業界のセオリーですが、バーグドルフはひたすら5番街にこだわり、世界のセレブリティーたちを招き入れてきました。映画では近くに住んでいたジョン・レノン、オノ・ヨーコ夫妻が担当者を自宅に呼んで、ファーを一度に何十着も買った逸話も、当時、2人の家を訪ねた本人の言葉で語られています。1901年に創業して以来、110年を超えるその長いヒストリーと、それを彩ってきた著名人たちの物語は、それ自体がアメリカのリュクスなファッション史と言えるでしょう。 2013年2月のNYコレクション会場にて リンダ・ファーゴ氏 (c)Rie Miyata このドキュメンタリーが優れているのは、きらびやかなセレブリティーのお買い物伝説をたどっているだけではなく、むしろこの老舗で働く人たちのプロフェッショナルな仕事ぶりに迫っているところにあります。例えば、商品を買い付けるかどうかを判断する立場のファッションディレクターとして確固たる評価を得ているリンダ・ファーゴ氏。私もNYコレクションの会場で何度もお見掛けし、あまりの素敵な着こなしに、しばしばスナップ写真まで撮らせていただきました。引き込まれそうになる笑顔で「OK」と言って、カメラの前に立ってくださる、気さくな人柄です。 この映画の中でもその尊敬すべきキャラクターはしっかり伝えられていて、まだ駆け出しのデザイナーに対しても決して上から目線で軽んじることをしないで、「今はまだ取り扱えない」という厳しい評価は伝えながらも、長所や改善ポイントを的確に述べて、「長くお付き合いしていきましょう」と励まします。彼女が発掘したデザイナーは数知れず、その圧倒的な目利きはバーグドルフの背骨となっています。 (c) 2012 BG PRODUCTIONS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED. (c) 2012 BG PRODUCTIONS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED. もはやマンハッタンの観光名所とすら言えるウィンドウディスプレイもバーグドルフの名物。毎回、シーズンにふさわしいテーマでこの百貨店の「顔」をこしらえるデヴィッド・ホーイ氏の仕事にもカメラは迫っています。ホリデーシーズンの到来を告げるウィンドウは1年の中でも、最も大事な見せ場。その日に向けてアーティスト達と協力しながら、商業的インスタレーション芸術とでも呼べそうなディスプレイに仕上げていくプロセスは、彼のプロ意識の高さと洗練されたアートセンスを証明しています。 ベティ・ホールブライシュ氏 (c) 2012 BG PRODUCTIONS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED. 売り場に立ち続けるパーソナルショッパーのベティ・ホールブライシュ氏はボーグドルフの伝説に数ページを書き加えた人物です。顧客に商品を薦めるアドバイザーであり、売り上げ獲得が使命の販売員ですが、その接客ぶりはちっとも型通りではありません。最大の持ち味は「毒舌」。お客様をほめちぎって気分をよくさせ、商品を買ってもらうといったセールス術を飛び越えたところでベティは顧客のハートをがっちりつかんでいます。似合わないものは似合わないと言う、その一見、非常識にも映る接客スタイルは、本音を聞きたいセレブリティーたちから不動の信頼を得ています。 こういった従業員のストーリーをはさみながら、大勢の大物デザイナーが登場し、バーグドルフへの賛辞を贈ります。「ここに自分の作品を置いてもらうのが夢だった」と口々に語るデザイナーたちの言葉からは、この特別な空間への想いが伝わってきます。同時に、バーグドルフ側が保ち続けている、本物を見極める眼力のすごさや、若き才能に光を当てる志の高さにも驚かされます。 マイケル・コース氏 (c) 2012 BG PRODUCTIONS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED. ジェイソン・ウー氏 (c) 2012 BG PRODUCTIONS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED. タクーン・パニクガル氏 (c) 2012 BG PRODUCTIONS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED. 今ではアメリカを代表するスターデザイナーになったマイケル・コース氏が最初にバイヤーから声を掛けてもらったときは、1人で服を作り、ショップで店番をしていたそうで、「ライン(主立った作品のサンプル)を持ってきて」と言われても、 そもそも全部が一点物だったので、慌ててそれらしくシリーズを作って持ち込み、バーグドルフとの取引が始まったと言います。ジェイソン・ウーやタクーンら、成長著しいデザイナーたちもこの館に作品を置く機会を持てたことが成功の足がかりになったと語り、ここがNYモードの登竜門であり出発点であることを教えてくれます。 (c) 2012 BG PRODUCTIONS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED. (c) 2012 BG PRODUCTIONS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED. (c) 2012 BG PRODUCTIONS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED. 実際に今回の2014春夏NYコレクションの期間中にバーグドルフを訪れて、このデパートのモード発信力の高さをあらためて実感しました。このような至福の空間に身を置いていると、自然とファッションを見る目が磨かれる上、見事な着こなしの顧客たちを見ると、おしゃれモチベーションもおのずと高まってきます。彼女たちを見て感じるのは、「バーグドルフへ行く」という行為そのものにおしゃれの意義を見いだしているところです。「おしゃれをしたくても、着ていく場所がない」と嘆く人がいますが、ファッションショッピングの際にドレスアップするのは、店側に喜ばれる上、自分の気分もアガるので、アメリカでは当たり前のたしなみになっています。もちろん、日本でもおしゃれな身なりのお客様は大歓迎されるから、さらにお買い物が楽しくなること間違いなしです。 バーグドルフに限らず、素敵なショップにはウィンドウや店内のディスプレイから気づきがもらえるし、ショップスタッフとのちょっとしたやりとりにも、自分らしい着こなしをバージョンアップするヒントが眠っていることがよくあります。納得のスタイリングでショップに足を運べば、自分の好みがすぐに分かってもらいやすいので、スタッフとのコミュニケーションも一段と価値のあるものになります。 おしゃれもショッピングも楽しめる「ファッションの秋」。この映画でおしゃれマインドに弾みをつけて、秋の新作がそろった、「ガリャルダガランテ」のショップに出掛けてみてくださいね。 『ニューヨーク・バーグドルフ 魔法のデパート』10月26日(土)Bunkamuraル・シネマほか順次公開!(c) 2012 BG PRODUCTIONS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.http://www.bergdorf.jp/【配給】:ショウゲート そして、今回ガリャルダガランテの公式フェイスブックページを「いいね!」してくれた方に、映画『ニューヨーク・バーグドルフ 魔法のデパート』の映画鑑賞券を抽選で5組10名様にプレゼント致します! 是非、皆さま、下記URLよりご応募下さい。↓https://present.crocos.jp/64128 |